みなさんはバイオフィルムという言葉を聞いたことはありますか?
お口の中でバイオフィルムが極力無い状態にしておく事がむし歯や歯周病だけではなく、コロナウイルスやインフルエンザに打ち勝つためにとても重要です。
バイオフィルムとは
微生物の集合体を言います。
水中にはぬるぬるした粘着物がしばしば形成されます。わかりやすく説明するとお風呂場の排水溝や、キッチンの三角コーナーのヌルヌルなどは、細菌が形成する生物膜【バイオフィルム】です。
地球環境で水のあるところには大抵バイオフィルムがみられます。
口腔内のプラーク(歯垢)はバイオフィルムの典型例です。
歯磨き粉などの薬剤の効果を発揮させるためには一度このバイオフィルムを機械的に破壊する必要があります。
それが歯科医院で行われる歯科衛生士による”PMTC”です。
プロによるメカニカル(機械的な)歯のお掃除です🦷
バイオフィルム内の病原性細菌が関与する感染症をバイオフィルム感染症といいます。むし歯も歯周病もバイオフィルム感染症の一つです。
そのため歯の表面のバイオフィルムを何としても除去しないと口腔内の健康を保つ事が難しいのです。
バイオフィルムはどうやって出来るの?
バイオフィルムは歯の表面に細菌が集まって、時間をかけてつくられていきます。
歯磨き後8時間たったころから歯の表面に細菌が付着して仲間を増やしていき、そこから48時間後には急速に菌が成長し、72時間後には完全なバイオフィルムになると言われています。
バイオフィルムがお口の中に与える影響
バイオフィルムを放置すると歯周病が進みます。
その結果歯茎がやせて、顎の骨が溶けることにより歯を失う可能性があります。
バイオフィルムが全身に与える影響
バイオフィルムを放置して歯周病が進行すると全身にも影響が出ます。
1️⃣狭心症・心筋梗塞
動脈硬化により心筋に血液を送る血管が狭くなったり、ふさがってしまい心筋に血液供給がなくなり死に至ることもある病気です。
血管内に発生するプラーク
動脈硬化は、不適切な食生活や運動不足、ストレスなどの生活習慣が要因とされていましたが、近年、歯周病原因菌などの細菌感染が注目されてきました。
歯周病原因菌などの刺激により動脈硬化を誘導する物質が出て血管内にプラーク(粥状の脂肪性沈着物)が出来血液の通り道は細くなります。
プラークが剥がれて血の塊が出来ると、その場で血管が詰まったり血管の細いところで詰まります。
2️⃣脳梗塞
脳の血管のプラークが詰まったり、頸動脈や心臓から血の塊やプラークが飛んで来て脳血管が詰まる病気です。
歯周病の人はそうでない人の2.8倍脳梗塞になり易いと言われています。
血圧、コレステロール、中性脂肪が高めの方は、動脈疾患予防のためにも歯周病の予防や治療は、より重要となります。
3️⃣糖尿病
歯周病は、糖尿病の合併症の一つと言われています。
実際、糖尿病の人はそうでない人に比べて歯肉炎や歯周炎にかかっている人が多いと複数報告されています。
近年では、歯周病になると糖尿病の症状が悪化するという逆の関係も明らかになってきました。
つまり、歯周病と糖尿病は、相互に悪影響を及ぼしあっていると考えられるようになってきたのです。
歯周病治療で糖尿病も改善することも分かってきています。
4️⃣妊娠性歯肉炎
妊娠すると歯肉炎にかかりやすくなるといわれています。
これには女性ホルモンが大きく関わってくるといわれており、特にエストロゲンという女性ホルモンがある特定の歯周病原細菌の増殖を促すこと、また、歯肉を形作る細胞がエストロゲンの標的となることが知られています。
そのほか、プロゲステロンというホルモンは炎症の元であるプロスタグランジンを刺激します。
これらのホルモンは妊娠終期には月経時の10~30倍になるといわれており、このため妊娠中期から後期にかけて妊娠性歯肉炎が起こりやすくなります。
基本的には歯垢が残存しない清潔な口の中では起こらないか、起こっても軽度で済むので、妊娠中は特に気をつけてプラークコントロールを行いましょう。
“妊娠性“とつくため、出産後には勝手に治ると勘違いしがちですが、
出産後に本格的な歯周病に移行する場合もありますので、注意が必要です⚠️
5️⃣誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎とは、食べ物や異物を誤って気管や肺に飲み込んでしまうことで発症する肺炎です。
肺や気管は、咳をすることで異物が入らないように守ることができます。しかし、高齢になるとこれらの機能が衰えるため、食べ物などと一緒にお口の中の細菌を飲み込み、その際むせたりすると細菌が気管から肺の中へ入ることがあります。
その結果、免疫力の衰えた高齢者では誤嚥性肺炎を発症してしまいます。
特に、脳血管障害の見られる高齢者に多くみられると言われています。
誤嚥性肺炎の原因となる細菌の多くは、歯周病菌であると言われており、誤嚥性肺炎の予防には歯周病のコントロールが重要になります。
コロナウイルスやインフルエンザウイルスでは肺炎が助長される事がありますので注意が必要です⚠️
6️⃣骨粗鬆症
骨粗鬆症は、全身の骨強度が低下し、骨がもろくなって骨折しやすくなる病気で、日本では推定約1.000万人以上いると言われています。そして、その約90%が女性です。
骨粗鬆症の中でも閉経後骨粗鬆症は、閉経による卵巣機能の低下により、骨代謝にかかわるホルモンのエストロゲン分泌の低下により発症します。
閉経後骨粗鬆症の患者さんにおいて、歯周病が進行しやすい原因として最も重要と考えられているのが、エストロゲンの欠乏です。
エストロゲンの分泌が少なくなると、全身の骨がもろくなるとともに、歯を支える歯槽骨ももろくなります。また、歯周ポケット内では、炎症を引き起こす物質が作られ、歯周炎の進行が加速されると考えられています。
多くの研究で、骨粗鬆症と歯の喪失とは関連性があると報告されています。
閉経後の女性は、たとえ歯周炎がなくても、エストロゲンの減少により、歯周病にかかりやすく、広がりやすい状態にあると言えます。
どんなにきれいに毎日歯磨きをされている方でも時間の経過とともにバイオフィルムが形成されます🦠
そして一度バイオフィルムが形成されると歯科医院で行う機械的なクリーニングでしか除去することができません。
口腔内環境により、メンテナンスの期間はお一人おひとり変わってきます。
当院では、患者さまに適したメンテナンスの期間を提案しております😊
名古屋市南区
こぎそ歯科医院
歯科医師
小木曽太郎