健康的な歯茎は、きれいなピンク色をしています。何らかの原因で白や赤色を帯びた“できもの”が生じることがあります。歯茎のできものといえば【口内炎】がまず頭に思い浮かぶかと思いますが、もしかしたらそれは【フィステル】という厄介なものかもしれません!しっかりとした治療が必要となります。
疲れたときや体調を崩したときに現れたり、消えたり繰り返していませんか??
歯茎のできものの正体
歯茎にできものができたら、まずはその位置について確認してみてください。例えば、食事の際に食べ物が当たるような部位に生じたものなら、口内炎が疑われますが、歯の根の先端付近に生じた【ニキビ】のようなできものは、【フィステル】の可能性が高いです。
フィステルとは、ニキビのように腫れるだけでなく、痛みを伴うことがあります。また、たまった膿が小さな穴から排出されているのもフィステルの特徴的な症状のひとつといえます。このフィステルは、口内炎と根本的に異なるものなので判断がつかない場合には歯科医院で診てもらいましょう🦷
フィステルができる原因
①神経まで達したむし歯
むし歯が歯の神経にまで進行すると、歯髄(しずい)に感染が起こります。その結果、歯髄が腐り、汚染物質や細菌が歯根の先端の「根尖孔(こんせんこう)」という細い穴から漏れ出て、フィステルを形成することがあります。
②精度の低い根管治療
重症化したむし歯では、歯の根の中をきれいにお掃除する根管治療が必要となります。その処置の精度が低いと、病原体の取り残しが生じ、フィステルを形成する原因となることもあります。根管というのは、とても狭く、暗く、複雑な構造をしているため、勘に頼った盲目的治療になりがちです。
③外傷
スポーツをしている時や道端で転んだときに歯を強く打った際、後日日が経ってフィステルが形成されることがあります。これは強い衝撃によって歯の神経に炎症が生じた結果。一見すると、歯は何の損傷も受けていないのですが、神経と血管で構成されている歯髄(しずい)には炎症が起こり、何もせずそのまま放置することで、細菌感染が生じるケースです。そうすると、むし歯を重症化させた時と同じようなフィステルを歯茎に形成します。
④歯根破折
歯の根が折れる歯根破折(しこんはせつ)がフィステルの原因になることもあります。歯根が破折する原因は外傷が多いですが、意外に多いのが「不適切な補綴物(ほてつぶつ)」です。とくに太い土台などを設置した被せ物では、歯根にくさび状の圧力が働きやすく、歯根破折のリスクが高まります。噛む力が強い、歯ぎしり・食いしばりの習慣がある方も歯根破折に要注意です。
フィステルを放置するとどうなる?
フィステルは、歯茎のできものであると同時に歯の根にたまった膿は定期的に排出されます。そのため、一時的に症状が自然と改善するため、できたり治ったりを繰り返します。体調不良や疲れがたまり免疫が下がったときなどに症状が出やすいです。何もせず放置していると、歯茎の中で症状がどんどん悪化していきます。なぜなら、フィステルの原因は膿が排泄されている部分ではなく、感染した根管やその周囲にあることがほとんどだからです。つまり、根本的な原因を取り除かずにフィステルを放置すると、痛みや腫れといった症状が強くなるだけでなく、最終的には原因となっている歯を抜歯しなければいけないケースがあります。
フィステルの治療法
歯茎に膿が排出される穴フィステルは、次のような治療法で症状を改善できます。
①根管治療
歯の神経にまで達したむし歯を治療する方法です。根管治療をしっかりと行えば、歯茎の腫れや炎症、フィステルの症状を改善、あるいは予防することができます。歯の根の治療を行った後は土台をたてて被せ物をかぶせます。
②感染根管治療
感染根管治療とは、文字通り細菌に感染した根管をきれいにお掃除する処置です。根管治療を行った歯が再び感染を引き起こしたケースに適応されます。もうすでに根管治療を一度行っている場合は、難易度はさらに高まります。根管内を無菌化できれば、フィステルや炎症反応も消失していきます。
③歯根端切除術
歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)とは、歯の根の方からアプローチして、フィステルの原因となっている細菌や汚染物質を取り除く方法です。歯の頭の方からアプローチする根管治療が行えない、あるいは根管治療による効果が認められない場合に限り実施され、歯茎をメスで切開して、歯根の先端と膿の塊を外科的に処置します。
④ヘミセクション
ヘミセクションとは、奥歯など何本かある根っこの片方だけを外科的に切除する方法です。切除する歯根は、根管治療でも治癒する傾向が見られないことが条件であり、処置の際には歯冠も半分、取り除くことになります。歯を丸ごと抜くのではなく、感染源となっている側だけ切除するので、大臼歯としての機能をある程度、保存することができ、前後の歯とブリッジにする支台として使用できます。
このように、フィステルは歯茎のできものとして現れますが、その原因は歯の中にあります。つまり、歯茎だけでなく、歯の病気でもあるため、歯科医院で根管治療などを受けなければ、症状を改善することはできません。そんなフィステルの症状に悩まされている方は、お気軽にご相談ください。フィステルを放置すると最終的には抜歯以外の選択肢がなくなることも多く、早期の受診が大切です🦷かけがえのない歯を残すためにも、フィステルは早めに治しましょう!